1. VTの概要
VT(Vanguard Total World Stock ETF)は、米国の世界最大級運用会社バンガードが提供する全世界株式ETFです。1本で先進国と新興国を含む世界中の株式市場に分散投資できるのが最大の特徴で、連動する指数は「FTSE Global All Cap Index」。この指数は大型株から小型株まで幅広くカバーし、投資対象は約9,000銘柄に及びます。
米国市場(NYSE Arca)に上場しており、日本の証券会社経由でも米国ETFとして購入可能です。

2. 基本情報
- 運用会社:Vanguard
- 上場市場:NYSE Arca(米国)
- ティッカーコード:VT
- 経費率:0.07%(2025年時点)
- 配当利回り:およそ2%(変動あり)
- 投資対象地域:先進国+新興国(全世界)
- 銘柄数:約9,000社
- 設定日:2008年
3. 地域別構成比(2025年時点の例)
- 米国:約60%
- 欧州:約15%
- 日本:約6%
- 新興国(中国、インド、ブラジルなど):約10%
- その他の国:約9%
このように米国株の比率が高いものの、世界全体にバランスよく分散されています。世界経済の成長をそのまま享受できる構造になっています。
4. VTのメリット
1本で世界中に投資できる
通常、世界全体に分散投資するには、米国株、先進国株、新興国株など複数の商品を組み合わせる必要があります。VTならこれ1本で全地域をカバーでき、ポートフォリオ構築の手間を省けます。
時価総額加重で自動リバランス
VTは時価総額加重型の指数に連動するため、各国・各企業の株価変動に応じて自動的に構成比率が調整されます。面倒なリバランス作業が不要です。
低コスト運用
経費率は0.07%と非常に低く、長期投資においてコスト負担を最小限に抑えられます。信託報酬の高いアクティブファンドに比べ、長期的には大きなリターン差につながります。
配当が得られる
年4回の配当があり、配当利回りは約2%。配当金を生活費に充てたり、再投資して複利効果を高めることも可能です。
新興国も含む成長期待
米国や欧州などの先進国に加え、新興国の株式も保有するため、長期的な成長ポテンシャルが期待できます。

5. デメリット・注意点
為替リスク
VTは米ドル建てETFのため、円高になると円換算で評価額が下がる可能性があります。長期保有では為替の影響が薄まりますが、短期的には注意が必要です。
米国課税
米国での配当に対して10%の源泉徴収があり、日本でも課税されます。ただし「外国税額控除」を活用すれば二重課税の一部を回避可能です。
米国株に偏りがち
世界全体に投資しているとはいえ、時価総額の大きさから米国株比率が約6割を占めます。米国依存を避けたい場合は他商品と組み合わせる必要があります。

6. VTと他のETF・投資信託の比較
商品名 | 投資対象 | 経費率 | 特徴 |
---|---|---|---|
VT | 全世界株式(先進国+新興国) | 0.07% | 1本で約9,000銘柄に投資可能 |
VTI | 米国株式のみ | 0.03% | 米国経済に集中投資 |
eMAXIS Slim 全世界株式(オールカントリー) | 全世界株式 | 0.05775%程度 | 円建て・少額から投資可能 |
投資初心者にとっては、※円建てで買えるオールカントリーのほうが手軽ですが、ドル建てのVTは直接米国市場のETFを保有する実感とコストメリットがあります。
※ドル転あり
7. 購入方法
- 米国株取引口座を開設
SBI証券、楽天証券、マネックス証券などで可能。 - 米ドルに両替
ネット証券の為替サービスを利用。手数料は証券会社によって異なります。 - VTを発注
米国市場の取引時間に合わせて注文を出します(日本時間23:30~翌6:00)。
8. 投資戦略
(1) 長期積立
毎月一定額を買い付け、時間分散によって価格変動リスクを低減します。
(2) 配当再投資
受け取った配当を再びVTに投資し、複利効果を最大化します。
(3) 他資産との組み合わせ
債券ETFやREITと組み合わせて、より安定的なポートフォリオを構築できます。
9. 過去のパフォーマンス(参考)
過去10年間の年平均リターンはおよそ7〜8%(米ドルベース)。これは世界経済全体の成長を反映したもので、長期的な資産形成に十分な水準です。ただし短期的にはリーマンショックやコロナショックのような下落局面もあるため、長期保有の覚悟が必要です。
まとめ
VTは「1本で世界中の株式市場に分散投資できる」究極のETFです。低コスト・高分散・配当ありという条件が揃い、長期投資の王道ともいえる商品です。為替リスクや税制の違いを理解した上で運用すれば、手間をかけずに世界経済の成長を享受できます。