ROEは、株主が出資したお金(自己資本)を使って、会社がどれだけ効率よく利益を生み出したかを示す指標です。
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正式名称は Return on Equity
日本語では「自己資本利益率」または「株主資本利益率」と呼ばれます。
計算式は以下の通り: ROE=当期純利益÷自己資本×100(%)

ROEの意味
ROEは「株主のお金でいかに稼いだか」という効率性を測るもの。
例えば、株主が100万円出資した会社が年間10万円の利益を出した場合、ROEは10%となります。
- 高ROE(効率的):少ない資本で大きな利益を生む=優良経営
- 低ROE(非効率):資本はあるのに利益が少ない=経営効率が悪い
具体例で理解するROE
- 自己資本:500億円
- 当期純利益:50億円
ROE=50÷500×100=10%
→ この会社は株主が出資した500億円で、年間10%の利益を上げたという意味になります。
ROEの目安
- 10%以上:優秀とされる目安(欧米基準)
- 5〜10%:標準的(日本企業の平均)
- 5%未満:効率が低い可能性
※業界特性によって目安は変わります(金融・ITは高ROE、製造・インフラは低ROEになりやすい)
ROEのメリット
- 株主目線で企業を評価できる
- 株主の資本がどれだけ有効活用されているかが分かる
- 経営効率を測れる
- 資本に対する利益率なので、単なる売上高や利益額より本質的
- 国際比較がしやすい
- 欧米企業はROEを重視しており、日本企業との比較にも使える
ROEのデメリット・注意点
- 自己資本が小さいとROEは高く見える
- 借金を増やして自己資本を減らすと、利益が同じでもROEが上がる
- 実際にはリスクが高まっている可能性があります。
- 一時的な利益変動に影響されやすい
- 特別利益や損失でROEが上下することも
- 資本効率だけで企業価値は測れない
- 成長性・安定性・キャッシュフローも合わせて評価する必要があります。
ROEと他の指標の違い
- ROA(総資産利益率)
- 企業全体の資産に対する利益率
- 借金の多寡に左右されず、事業効率を見るのに適している
- PER(株価収益率)
- 株価が利益の何倍かを表す指標
- PBR(株価純資産倍率)
- 株価が純資産の何倍かを表す指標
→ ROEは「経営効率」、PERやPBRは「株価水準」を示す。
これらを組み合わせて評価するのが基本。
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ROEを分解する「デュポン分析」
ROEは3つの要素に分解できます(デュポン式)。
ROE=売上高利益率×総資産回転率×財務レバレッジ
1. 売上高利益率(純利益 ÷ 売上高)
- どれだけ利益を残せているか(収益性)
2. 総資産回転率(売上高 ÷ 総資産)
- 資産を効率よく使っているか(効率性)
3. 財務レバレッジ(総資産 ÷ 自己資本)
- 自己資本に対する総資産の倍率(借入活用度)
例:デュポン分析で見るROE
- 売上高利益率:5%
- 総資産回転率:1.0回
- 財務レバレッジ:2倍
ROE = 5% × 1.0 × 2 = 10%
→ 利益率が低くても、借入を活用し効率よく運用していればROEを高められる。
高ROE企業の特徴
- 無駄な資産が少なく効率的な経営
- 成長分野に集中投資している
- 株主還元(配当・自社株買い)を重視
- 欧米企業や日本のグロース株に多い
低ROE企業の特徴
- 過剰な現金・資産を抱えている
- 成長戦略が乏しく、利益率が低い
- 設備投資や人件費が非効率
- 日本の伝統的な大企業や公共性の高い企業に多い

日本市場におけるROEの現状
- 日本企業の平均ROEは約8%前後
- 米国企業の平均ROEは15%以上
- 東京証券取引所はPBR1倍割れ改善要請と同時にROE向上も求めている
- 企業も株主重視経営へシフト中(配当増加・自社株買い活発化)
ROEと株価の関係
- 高ROE企業は市場で評価されやすく、PER・PBRも高くなりがち
- 低ROE企業は割安に放置されやすいが、改善余地があれば投資妙味あり
- ROE向上施策(資産圧縮、利益率改善)が株価上昇の材料になる
ROEを使った投資戦略
1. 高ROE株投資
- ROE10%以上かつ安定している企業を狙う
- 成長株や優良株に多い
2. 低ROE→改善期待株
- 低ROEだが改革が進む企業(不動産売却、事業再編など)
3. ROEとPBRの組み合わせ
- ROEが高いのにPBRが低い企業=市場に見落とされている優良株
ROEのチェックポイント
- 過去5年平均で安定しているか
- 業界平均と比較して高いか
- ROE向上の要因が持続可能か(借金頼りでないか)
- 利益率・回転率・レバレッジのバランスが良いか

まとめ
ROEは、株主資本を使ってどれだけ効率よく利益を稼いだかを示す重要指標です。
- 10%以上:優秀(特に安定的なら高評価)
- ROE向上の背景が健全かどうか確認することが大切
- デュポン分析で「利益率・効率・レバレッジ」のバランスを見ると深く理解できる
- PERやPBRと組み合わせると、割安・割高も同時に判断できる
ROEは「企業の稼ぐ力」と「株主への還元力」を測る物差しとして、長期投資にも短期分析にも役立ちます。
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