ROA(Return on Assets)は、企業が持つ総資産をどれだけ効率よく使って利益を生み出しているかを示す指標です。
株主や経営者が企業の「稼ぐ力」を測るために用いられ、資産効率の評価に欠かせません。

ROAの計算式
ROA(%)=当期純利益÷総資産×100
または、営業利益ベースで計算する方法もあります。
ROA(営業利益ベース)=営業利益÷総資産×100
用語の意味
- 総資産:現金・売掛金・在庫・設備・土地など、企業が保有するすべての資産
- 当期純利益:最終的な利益(税引後利益)
具体例
- 総資産:1,000億円
- 当期純利益:50億円
ROA=50÷1,000×100=5%
→ この企業は、持っている資産全体から5%の利益を稼いでいるということになります。
ROAの意味・重要性
ROAは、企業の資産効率性を評価する指標です。
同じ利益額でも、資産が少なければ高ROAとなり、効率的な経営といえます。
例:同じ利益でもROAが違う場合
A社:総資産1,000億円 → 利益50億円 → ROA 5%
B社:総資産500億円 → 利益50億円 → ROA 10%
→ B社のほうが少ない資産で同じ利益を生んでおり、より効率的と言えます。
ROAの目安
業界によって異なりますが、一般的には:
- 5%以上:優良企業
- 3〜5%:標準的
- 3%未満:効率が低い
ROAの特徴
- 資産効率に注目
- 企業の持つ資産がどれだけ利益を生んでいるかを示す
- 財務構造に左右されない
- 借入金や自己資本の比率に関係なく総合的な効率を見れる
- 企業規模を超えた比較が可能
- 大企業・中小企業でも資産効率で比較できる

ROAのメリット
- 資産の使い方の良し悪しがわかる
- 多額の資産を持っているのに稼げていない企業はROAが低い
- 経営改善の指標になる
- 不要な資産を削減する、資産効率の改善策を立てやすい
- 投資家にとって企業効率を判断できる
- 同業他社比較に有効
ROAのデメリット・注意点
- 資産規模が大きい業種(製造業、不動産業)は低くなりやすい
- 営業外損益や一時的要因で変動しやすい
- 無形資産やオフバランス資産(リース資産など)が反映されにくい
ROAとROEの違い
- ROA:総資産に対する利益率
- ROE:自己資本に対する利益率
関係式
ROE=ROA×財務レバレッジ
財務レバレッジ(総資産 ÷ 自己資本)が高いと、ROEはROAより高くなる。
つまり、ROAは企業の純粋な効率性を測り、ROEは株主視点の効率性を測る。
ROAを高める方法
- 利益を増やす
- 売上増加、コスト削減、利益率改善
- 資産を減らす
- 不要な資産売却
- 在庫圧縮・固定資産効率化
- 資産回転率を上げる
- 販売サイクルを短縮
- 設備稼働率向上
具体例:資産圧縮でROA改善
- 総資産1,000億円 → 利益50億円 → ROA 5%
- 不要資産100億円売却 → 総資産900億円
- 利益50億円 → ROA 5.5%に改善
ROAの活用方法(投資家視点)
- 効率的な企業かどうかを判断
- ROAが高い=資産を有効活用している企業
- 同業他社と比較
- 業界平均より高ければ優秀
- ROEと併用して総合評価
- 高ROEでもROAが低い場合は借入依存の可能性あり
業界別ROAの特徴
- 製造業:設備投資が多く、3〜5%程度が一般的
- 小売業:資産が軽いので10%以上もあり得る
- 金融業:特殊なビジネスモデルでROAは低め
- IT・サービス業:無形資産中心で高ROAになりやすい
日本企業と米国企業のROA比較
- 日本企業:総資産が多く内部留保も厚いためROAは低め(3〜5%程度)
- 米国企業:資産効率を重視するためROAが高め(5〜10%超)
ROAと資産回転率・利益率の関係(デュポン分析)
ROA=利益率×資産回転率
- 利益率を高める(高付加価値商品、コスト削減)
- 資産回転率を上げる(効率的な在庫・設備利用)
両方の観点で改善策を考えられる。

ROAを投資判断に活かすポイント
- 業界平均と比較
- 同じ業界で高ROAなら競争優位がある
- 過去との推移を確認
- 継続的に改善している企業は優良
- ROEとのバランス
- 高ROE・低ROAなら借入依存型
- 高ROE・高ROAなら理想的
- EPSや自己資本比率と併用
- 成長性・安全性・効率性を総合評価
まとめ
- ROAは資産効率を測る指標
- 高ROA=資産を有効活用し、高利益を出しています。
- 5%以上なら優秀、業界平均と比較することが重要です。
- ROEや自己資本比率と合わせて財務全体を評価することができます。
- 投資家・経営者双方に有用な指標と言えるでしょう。
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