1. はじめに
NISA(少額投資非課税制度)は、投資で得た利益や配当金に対して税金がかからないという大きなメリットがあります。日本では通常、株式の配当や売却益には20.315%(所得税15%、住民税5%、復興特別所得税0.315%)が課税されますが、NISAを活用すればこの税金がゼロになります。
そのため「高配当株投資はNISAと相性がいいのでは?」と思う方も多いでしょう。確かに税金がかからないのは魅力的ですが、実際には長期的な資産形成という観点では非効率になりうるという見方もあります。
この記事では、高配当株投資をNISAで行うメリットとデメリット、さらに効率的な使い方について具体例を交えて解説します。

2. NISAの基本と高配当株の特徴
2-1. NISAの仕組み
2024年からNISAは制度改正により恒久化され、以下のような形になりました。
- つみたて投資枠:年間120万円まで(長期・分散投資向け)
- 成長投資枠:年間240万円まで(個別株やETFなど幅広く投資可能)
- 非課税保有期間:無期限
- 生涯投資枠:1,800万円(うち成長投資枠は1,200万円まで)
つまり、NISA口座で保有している間は、売却益や配当金に税金がかからないという制度です。
2-2. 高配当株の魅力
高配当株とは、配当利回りが市場平均より高い株式のことです。一般的に日本株では配当利回り3〜5%程度が高配当株と呼ばれます。
メリットは以下の通りです。
- 定期的なキャッシュフローが得られる
- 株価変動に関係なく配当が入るため心理的安心感がある
- 長期保有のモチベーションになる
3. NISAで高配当株投資が「非効率」と言われる理由
一見相性が良さそうな組み合わせですが、長期の資産形成という視点では必ずしも最適ではない場合があります。主な理由は以下の通りです。
3-1. 複利効果が弱くなる
高配当株は配当金を受け取ることで、企業内部に残る利益(内部留保)が減ります。成長企業は利益を再投資して企業価値を高めますが、高配当株はその再投資余地が少なくなります。
結果的に、株価成長(キャピタルゲイン)が限定的になりやすく、配当+株価成長の合計リターンがインデックス投資より劣るケースが多いのです。
3-2. NISA枠が固定される機会損失
NISAでは、年間投資枠が限られています。高配当株をNISAで買って長期間保有すると、株価が大きく成長しないまま枠を占有し続ける可能性があります。
一方、成長性の高い銘柄やインデックスファンドなら、株価上昇と配当再投資で資産額を大きく伸ばせる可能性があり、限られたNISA枠を最大限活用できるのです。
3-3. インカムゲインは課税メリットが小さい場合も
確かにNISAでは配当金も非課税ですが、配当金の再投資を特定口座で行えば税引き後でも十分に複利運用できます。また、課税による複利効果の減衰は成長株の売却益に比べれば影響が小さいケースもあります。
4. 実例で比較:高配当株 vs インデックス投資
4-1. 条件設定
- 投資額:年間120万円(NISAつみたて枠)
- 投資期間:20年間
- 高配当株:配当利回り4%、株価成長1%
- インデックス:配当利回り1.5%、株価成長4%
- 配当は再投資
4-2. 結果(ざっくり試算)
- 高配当株:20年後 約3,480万円
- インデックス:20年後 約4,410万円
成長株やインデックスの方が、配当を抑えて内部留保を再投資し、株価を伸ばすことで総資産が増えやすい結果となります。

5. 高配当株投資が向くケース
もちろん、高配当株投資が全くダメというわけではありません。次のようなケースでは有効です。
- 既に資産形成の目標額に近づいており、安定的なキャッシュフローを重視したい場合
- 生活費の一部を配当で賄いたい場合
- 株価変動リスクを抑えつつ精神的安心感を得たい場合
特にリタイア後やFIRE後には、NISAで高配当株を保有して税引き後の配当を100%受け取れるメリットは大きいです。
6. 効率的なNISA活用法の提案
- 若いうちは成長投資枠を成長性の高い投資信託やETFに
- 高配当株は課税口座(特定口座)で保有し、配当を再投資
- 資産形成後にNISAで高配当株へシフト
この方法なら、若い時期はNISA枠の成長性を最大限活かし、老後は非課税で安定収入を得ることができます。
7. まとめ
- 高配当株は安定収入を得られるが、成長性は低くなりやすい
- NISAの枠を高配当株で埋めると、機会損失が発生する可能性がある
- 若いうちは成長株やインデックス投資で資産を増やし、老後に高配当株へシフトが効率的
NISAは「限られた非課税枠をどう使うか」が重要です。目的とライフステージに応じた使い方を意識すれば、高配当株も成長株もバランスよく取り入れることができます。