野村不動産ホールディングス(証券コード:3231)は「プラウド」シリーズを代表とする分譲マンション事業を軸に、オフィスや商業施設、物流施設の開発、さらには仲介や資産運用まで幅広い事業を展開する総合不動産企業です。野村ホールディングスの関連会社としてグループの信頼性を背景に、安定した成長を続けています。
この記事では野村不動産ホールディングスの事業内容、業績動向、株価指標、今後の成長戦略を投資家目線で解説し、投資先としての魅力と注意点を整理していきます。

企業概要と事業内容
野村不動産ホールディングスは、不動産業界の中でも住宅開発に強みを持ちつつ、都市開発や資産運用事業へとビジネスを多角化してきました。主力事業は大きく分けて以下の6つです。
- 住宅事業:「プラウド」「オハナ」「プラウドシーズン」などのブランドで展開。マンションや戸建分譲、リノベーションを手掛け、都心から郊外まで幅広い需要に対応しています。
- 都市開発事業:オフィスビルや商業施設、物流施設などを開発。特に中規模オフィスブランド「PMO」や中小規模事業者向けオフィス「H1O」など独自戦略が特徴です。
- 仲介・CRE事業:不動産仲介サービスや企業不動産(CRE)のコンサルティングを提供し、法人需要を取り込んでいます。
- 運営管理事業:オフィスや住宅の管理業務を通じて安定収益を確保。プロパティマネジメントやビル管理も含まれます。
- 海外事業:アジアを中心に不動産開発や投資を展開し、グローバルな成長を目指しています。
- 資産運用事業:REIT(不動産投資信託)や私募ファンドを通じて投資家資金を運用。不動産証券化市場でも存在感を高めています。
売上の内訳では住宅事業が依然として約半分を占めていますが、都市開発や運営管理、資産運用事業の比率が徐々に拡大し、収益基盤が安定してきているのが特徴です。
株価と投資指標
2025年8月現在、野村不動産ホールディングスの株価は900円台で推移しています。年初来高値は930円台、安値は780円台であり、比較的安定した値動きを見せています。
株価指標を整理すると以下の通りです。
- PER(株価収益率):約10倍前後
- PBR(株価純資産倍率):約1倍
- 配当利回り:約4%前後
- ROE(自己資本利益率):10%程度
- 自己資本比率:約28%
PERが10倍前後、PBRが1倍程度というのは、不動産業界全体の水準と比較しても割安感がある水準です。加えて、配当利回りが4%近くある点は、インカムゲインを重視する投資家にとって魅力的です。
業績動向
2026年3月期の第1四半期決算では、経常利益が前年同期比で増加し、アナリスト予想を上回る結果となりました。住宅事業の販売堅調に加え、都市開発や運営管理事業が収益を押し上げています。
近年の業績は以下の傾向があります。
- 住宅事業は販売戸数の増加により安定した収益を確保
- 都市開発ではオフィス・物流施設の需要取り込みが進む
- 資産運用事業もREITやファンド収益が堅調
- 海外事業はまだ規模は小さいが成長ポテンシャルが高い
全体として収益源の多様化が進んでおり、特定事業への依存度が低下している点は投資家にとって安心材料です。

投資家目線での魅力
高配当利回りと株主還元姿勢
配当利回りは4%前後と高水準にあり、安定したキャッシュフローを背景に株主還元を重視しています。今後も継続的な配当が期待できる点は、長期投資に適しています。
都市開発による成長余地
オフィスや物流施設、再開発案件を通じて今後の成長余地が見込まれます。特に東京圏の再開発は同社の得意分野であり、資産価値の上昇に直結します。
安定収益を生む運営管理・資産運用
住宅販売の市況変動に左右されやすいデベロッパー事業に対し、運営管理や資産運用は安定収益を確保できる強みがあります。
割安なバリュエーション
PER・PBRともに低めで推移しており、不動産セクター全体がやや割安に放置されがちな中でも投資妙味があるといえます。
投資におけるリスク要因
もちろん投資にあたってはリスクも存在します。
- 不動産市況の影響:景気後退や金利上昇は住宅需要や不動産価格に直結します。
- 財務リスク:自己資本比率が30%を下回っているため、借入依存度には注意が必要です。
- 市況変動による業績のブレ:特に住宅販売が想定を下回る場合、収益への影響が大きくなります。
- 政策リスク:不動産関連税制や金融緩和政策の変化も株価に影響を与えます。

今後の展望
野村不動産ホールディングスは、国内の住宅需要が縮小する中でも、多角化と再開発戦略によって成長を続ける可能性があります。
特に注目すべきは以下のポイントです。
- 東京圏を中心とした再開発案件の増加
- 物流施設やオフィスの需要取り込み
- REITや私募ファンドを通じた運用資産拡大
- 海外展開の本格化による新市場での成長
日本の不動産市場は人口減少や少子高齢化という構造的課題を抱えていますが、同社は都市部の再開発や海外市場への進出で成長余地を確保できると考えられます。
まとめ
野村不動産ホールディングス(3231)は、分譲マンションのブランド力を基盤に、都市開発・運営管理・資産運用へと事業を広げ、安定した収益構造を築いています。
株価は割安感があり、配当利回りも高水準で、長期投資に適した銘柄といえるでしょう。もちろん、市況リスクや財務健全性への注意は必要ですが、総合的に見ると魅力的な投資先のひとつです。
「高配当+割安+成長余地」という三拍子が揃っており、特に安定収益を求める投資家にとって注目すべき銘柄といえるでしょう。