会社概要
クニミネ工業株式会社は、日本国内でベントナイトを中心とした鉱物資源を活用し、様々な製品を展開する上場企業です。
鋳物用ベントナイトにおいては国内シェア約70%を誇り、業界トップ企業として安定した収益基盤を確立しています。
鋳物業界向け製品以外にも、土木建築用資材、ペット用砂、農業資材、化成品など、多角的な事業展開を行っています。
これにより、市場の変動に対するリスク分散が図られ、安定的な収益確保につながっています。
同社は、1960年代から鉱物資源の加工技術を蓄積しており、精製ベントナイトの製造や用途拡大に強みがあります。
特に精製技術を活かした環境対応製品の開発は、近年の環境意識の高まりを背景に需要が増加しています。
こうした製品群は、土壌改良や水質浄化、建築材料など多分野で活用されています。

事業セグメント別業績
クニミネ工業の事業は主に以下の3つに分類されます。
ベントナイト事業
鋳物用ベントナイトは同社の主力事業で、国内シェアは約70%です。
自動車や建設機械向けの鋳造需要が堅調で、安定的な売上を確保しています。
また、土木用資材やペット用砂などの用途拡大も進めており、既存市場の収益安定と新市場開拓の両立を図っています。
2024年3月期においては、鋳物用の売上は堅調で、前年に比べ販売数量の増加と単価維持の両面で利益貢献がありました。
特に自動車業界の設備更新や海外向け製品の供給が、事業収益を支えました。

アグリ事業
農薬基剤や農業資材向けの製品群も成長しています。
特に土壌改良剤や肥料原料向け精製ベントナイトは、環境に配慮した農業のニーズ増加により需要が高まっています。
農業従事者や農業法人向けに製品を供給することで、安定した売上基盤を確立しています。
また、農業政策や補助金の影響で市場規模が拡大傾向にある点も追い風です。
化成品事業
化成品事業では、精製ベントナイトを基にした環境保全処理剤の開発・販売が進んでいます。
これらの製品は水質浄化、土壌改良、排水処理など、環境保護分野での需要が増加しています。
特に自治体や民間企業の環境投資の増加に伴い、同事業の売上は年々拡大しています。
化成品事業は全体の売上構成比としてはベントナイト事業に次ぐ規模ですが、利益率が高く、将来的な成長が期待される分野です。

財務状況
2024年3月期の連結業績は以下の通りです。
- 売上高:15,675百万円(前年同期比2.3%増)
- 営業利益:1,231百万円(前年同期比48.5%増)
- 経常利益:1,645百万円(前年同期比19.7%増)
- 当期純利益:1,044百万円(前年同期比24.0%増)
売上高は横ばい傾向でしたが、原材料費の安定や生産効率改善、製品単価の適正化により、利益率の改善が顕著でした。
特に営業利益は前年から大幅増加しており、事業構造の効率化が利益拡大に寄与しています。
財務指標
- PER(株価収益率):10.98倍
- PBR(株価純資産倍率):0.66倍
- 配当利回り:約3.5%
- 配当性向:約45.4%
- 自己資本比率:83.4%
これらの指標から、クニミネ工業は安定した収益力と株主還元意識を両立していることがわかります。
PERが低めで割安感があり、配当利回りも市場平均を上回る水準です。
自己資本率が非常に高く、超優良財務企業と言えます。
今後の展望
クニミネ工業は、2030年を見据えた長期ビジョンを策定しています。
事業ポートフォリオの拡大、高付加価値化、高収益化を軸に、以下の戦略を進めています。
- 成長領域の拡大:クレイサイエンスやアグリ事業の拡大。新市場開拓により、売上の多角化を図る。
- 高付加価値化:ベントナイト事業の高付加価値製品開発。製品の差別化で利益率改善を目指す。
- 高収益化:既存事業の効率化、コスト管理を徹底し、収益性向上を追求する。
また、環境規制やサステナビリティへの意識が高まる中、化成品や環境対応製品の需要は今後さらに増加する見込みです。
海外市場への展開や製品用途の多様化も進め、長期的な成長を目指しています。

まとめ
クニミネ工業は、鋳物用ベントナイトで国内トップの地位を持ち、安定した業績と健全な財務基盤を有する企業です。
アグリ事業や化成品事業の成長により、多角的な収益源を確保しています。
株主還元も重視しており、配当利回りは約3.5%、配当性向は約45%です。
今後は高付加価値製品の開発と海外市場の開拓により、持続的な成長が期待されます。
投資家にとって、安定した収益基盤と成長性を兼ね備えた銘柄として注目に値します。