1. 為替変動リスクとは?
海外資産に投資する際、避けて通れないのが為替変動リスク(かわせへんどうリスク)です。
これは、為替レートの変動によって、投資の損益が影響を受けるリスクを指します。
例えば、米国株に投資する場合、株価の値上がり・値下がりだけでなく、円とドルの為替レートの動きでも最終的な利益や損失が変わります。
- ドル高 → 円換算で利益が増える場合あり
- ドル安 → 円換算で損失が出る場合あり
つまり、海外投資では2つの値動きを意識する必要があります。
- 投資対象(株式・債券・投資信託など)の値動き
- 為替レート(円と外貨の交換比率)の変動

2. 為替変動リスクの仕組み
2-1. 為替レートとは?
為替レートは、異なる通貨同士の交換比率を示します。
例:1ドル=150円の場合、1ドルを円に換えるには150円が必要です。
このレートは、国際的な資金の流れや金利、景気、政治情勢などにより常に変動しています。
2-2. 為替変動が投資に与える影響
例:米国株に投資する場合
- 投資時:1ドル=100円
- 株価:100ドル(投資額1万円)
その後…
- 株価が20%上昇 → 120ドル
- しかし、為替が1ドル=80円に円高 → 120ドル×80円=9,600円
→ 株価は上がったのに円換算では損
逆に、株価が変わらなくても円安が進むと、円換算で利益が出る場合もあります。
3. 為替変動リスクが起こる主な要因
3-1. 金利差
日米など各国の金利差によって、資金の流れが変わり為替も変動します。
- 米国金利が高い → ドル買いが進む → 円安ドル高
- 日本金利が高い → 円買いが進む → 円高ドル安
3-2. 経済指標・景気動向
GDPや雇用統計、物価指数などの発表で、景気見通しが変わり為替も動きます。
3-3. 政治・地政学リスク
戦争や選挙、政権交代など不安材料があると、安全資産として円が買われ円高になる傾向があります。
3-4. 中央銀行の政策
FRB(米連邦準備制度)や日銀の金融政策発表(利上げ・利下げ)で為替は大きく動きます。

4. 為替変動リスクの影響を受ける投資商品
海外資産に投資する商品は、すべて為替リスクの影響を受けます。
5. 為替リスクを回避する方法(為替ヘッジ)
5-1. 為替ヘッジあり商品を選ぶ
投資信託やETFには「為替ヘッジあり/なし」の2種類があります。
- ヘッジあり:為替変動の影響を抑える(ただしコストあり)
- ヘッジなし:為替変動の影響を受ける(為替差益も狙える)
例:
- eMAXIS Slim 米国株式(S&P500) → 為替ヘッジなし
- eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)為替ヘッジあり → 為替リスク抑制
5-2. 長期投資でリスクを平準化
為替は短期的に大きく動きますが、長期的には平均化する傾向があります。
時間を分散して積立投資することで、リスクを平準化できます。
5-3. 資産分散
- 円資産と外貨資産をバランスよく保有
- 米国株だけでなく、全世界株や国内株も組み合わせる
為替だけでなく、国・地域ごとに分散することがリスク低減につながります。
5-4. 円安・円高のタイミングを意識する
長期投資ではタイミングを狙うのは難しいですが、極端な円高局面では外貨買いのチャンスになる場合があります。
例:1ドル=100円時に米国株投資 → その後円安で資産増加
6. 為替変動リスクと投資戦略
6-1. 円安局面でのメリット・デメリット
- メリット:外貨建て資産の評価額が円換算で増加
- デメリット:外貨購入コストが高くなる
6-2. 円高局面でのメリット・デメリット
- メリット:安く外貨資産を購入できる
- デメリット:外貨資産の評価額が円換算で減少
7. 初心者におすすめの対応策
- 基本は為替ヘッジなしで長期積立
→ コストが低く、長期分散効果を活かせる - 老後資金や近い将来使う資金はヘッジあり
→ 為替リスクを抑えたい場合に有効 - 国内外の資産をバランスよく保有
→ 全世界株式やバランス型ファンドも検討

8. まとめ
- 為替変動リスクは、海外投資で避けられないリスク
- 為替変動によって、円換算の利益・損失が変動する
- 対策は「ヘッジあり商品」「長期・分散投資」「資産バランス調整」
- 為替リスクを恐れすぎず、資産形成の目的と期間に合わせて戦略を立てることが重要