自己資本比率は、企業の総資産に占める自己資本の割合を示す指標です。
企業の財務の健全性(安全性)を判断するために用いられます。

自己資本比率の計算式
自己資本比率(%)=自己資本÷総資産×100
用語の定義
- 自己資本:株主が出資した資本 + 会社がこれまで稼いだ利益の蓄積(利益剰余金)
- 総資産:会社が保有する資産の合計(現金・設備・在庫など)
具体例
- 総資産:1,000億円
- 自己資本:400億円
自己資本比率=400÷1,000×100=40%
→ 会社の資産のうち40%が自己資本、残り60%が借入金や社債などの負債でまかなわれている。
自己資本比率の意味
- 高いほど:借金が少なく、安全性が高い
- 低いほど:借金依存度が高く、景気悪化で倒産リスクが高い
自己資本比率の目安
- 50%以上:非常に安全(無借金経営に近い)
- 30〜50%:標準的(多くの上場企業がこの範囲)
- 20〜30%未満:借金依存度が高め(景気変動に弱い)
- 10%未満:財務リスクが高い(金融業や不動産業では普通の場合も)
自己資本比率のメリット(高い場合)
- 倒産リスクが低い
- 借入が少ないため、利息負担も軽い
- 財務の安定性
- 不況や赤字でも持ちこたえやすい
- 資金調達の信用力が高い
- 銀行や投資家からの評価が良い
自己資本比率のデメリット(高すぎる場合)
- 成長機会を逃す可能性
- 借入を抑えすぎて設備投資やM&Aに積極的でない
- 株主資本効率が低下する
- ROE(自己資本利益率)が下がる傾向がある
自己資本比率が低い企業の特徴
- 借入金を多く活用して急成長している
- 設備投資や不動産投資を積極的に行っている
- 景気変動の影響を受けやすい業種(建設・航空・不動産など)
自己資本比率が高い企業の特徴
- 無借金経営や低借入体質
- 内部留保(利益剰余金)が厚い
- 消費財・食品・インフラなど安定業種に多い

自己資本比率と他の指標の違い
- ROE(自己資本利益率)
- 自己資本を使ってどれだけ効率よく利益を出しているか
- 高ROEでも自己資本比率が低いと財務リスクが高い場合があります。
- ROA(総資産利益率)
- 総資産全体に対する利益率
- 自己資本比率と合わせると、借入依存度もわかります。
- 負債比率
- 負債 ÷ 自己資本
- 自己資本比率の逆の見方
自己資本比率と成長戦略
- 高自己資本比率企業
- 安定重視
- 成長より配当・自社株買い重視
- 低自己資本比率企業
- 借入を活用した成長重視
- 高リスク・高リターンの戦略
自己資本比率と業界特性
- 金融業
- 自己資本比率は低めでも問題なし(銀行は預金で運営)
- 製造業
- 設備投資が多いが30〜40%程度が標準
- IT・サービス
- 軽資産モデルで高自己資本比率になりやすい
自己資本比率の改善方法
- 利益を増やす
- 売上増加、コスト削減で純利益を積み上げる
- 増資する
- 新株発行で資本を増やす(既存株主の持分希薄化に注意)
- 負債を減らす
- 借金返済や資産売却で負債を圧縮する
自己資本比率と株価の関係
- 自己資本比率が高い=倒産リスク低 → 安定株として評価
- ただし、成長性が低い場合は株価が伸びにくい
- 自己資本比率が低い=リスク高 → 景気好況期には株価が急騰することも
投資家が見るべきポイント
- 自己資本比率が30%未満なら注意(景気悪化リスク)
- 業界平均と比較して高いか低いかを確認
- 高すぎる場合は成長性に乏しい可能性
- ROEやROAと併せて評価することでバランスを確認
自己資本比率の国際比較
- 日本企業
- 平均40%前後(内部留保が多く、借入を抑える傾向)
- 米国企業
- 平均20〜30%(借入を活用した効率経営が多い)

自己資本比率の活用方法(投資)
- 長期投資
- 自己資本比率30〜50%の安定成長株を選ぶ
- EPSやROEも合わせて成長性を確認
- 短期投資
- 自己資本比率低めの成長株も狙うが、景気悪化リスクに注意
まとめ
自己資本比率は企業の財務安全性を示す重要指標であり、投資家・経営者の両方にとって不可欠な数値です。
- 30〜50%が目安(業種ごとの平均も考慮)
- 高い=安全、低い=リスク大だが成長性あり
- ROEやROAと組み合わせて総合的に判断します
- 長期投資では高自己資本比率×EPS成長企業が有望とされています