1. はじめに|「現金貯蓄=安全」という思い込み
日本では長らく「お金は銀行預金で貯めるのが一番安全」という価値観が根付いてきました。
定期預金や普通預金にお金を預けておけば元本割れのリスクはなく、心の安定感も得られます。
しかし、現金のみで資産を保有することは本当に安全なのでしょうか?
結論から言えば、現金のみで貯蓄することは「日本円という一つの資産クラスに集中投資している状態」であり、リスク分散が全くできていない状況です。
この記事では、現金貯蓄の意味やリスクを整理し、なぜ「日本円集中投資」なのか、そしてどのように分散すべきかを具体的に解説します。

2. 現金のみで貯蓄するとはどういう状態か?
「現金のみで貯蓄する」というのは、資産をすべて日本円の現金または預金として保有している状態を指します。
- 銀行口座の普通預金・定期預金
- タンス預金(現金として自宅保管)
つまり、日本円という一つの通貨・資産クラスだけに依存している状態です。
これを投資の言葉で置き換えると、日本円への「集中投資」と同じ構造になっています。
3. なぜ現金=日本円への集中投資なのか?
3-1. 通貨分散がない
株式投資や不動産投資、金投資では「分散」が重要だとよく言われますが、現金貯蓄だけでは通貨の分散が全くできていません。
全財産を日本円で持っている場合、円安や円の信用低下に弱いポートフォリオとなります。
3-2. インフレに弱い
インフレが進むと、同じ1万円の価値で買えるモノやサービスが減ります。
たとえば、物価が年2%ずつ上昇すると、10年で約20%も購買力が下がる計算です。
現金は額面こそ変わらないものの、価値は確実に目減りしていくという現実があります。
3-3. 日本経済や財政への依存
日本円の価値は、日本の経済力・財政健全性・金融政策によって支えられています。
少子高齢化や国債残高の増加など、将来的なリスク要因も多く、日本円だけに依存するのは危険です。
4. 現金のみ貯蓄のリスクを具体的に考える
4-1. インフレリスク
過去の日本はデフレ傾向が続きましたが、近年は物価上昇率2%超のインフレ局面に入りました。
100万円を現金で持っていても、10年後には実質的な価値が80万円程度に目減りする可能性があります。
4-2. 円安リスク
2022〜2024年にかけて円安が急激に進行し、1ドル=150円を超える局面がありました。
海外旅行や輸入品の値段が急騰し、日本円だけの生活コストが増加しました。
4-3. 日本の財政リスク
日本はGDP比で世界最悪水準の政府債務を抱えています。
万が一、日本国債の信認が揺らげば、円の価値が急落する可能性もゼロではありません。

5. なぜ多くの日本人が現金貯蓄を続けるのか?
5-1. 過去のデフレ体験
1990年代以降の長期デフレで、現金価値が減らなかった経験が「現金=安全」の固定観念を生みました。
5-2. 投資教育の不足
学校教育や家庭で投資を学ぶ機会が少なく、投資=危険、現金=安心というイメージが根強いです。
5-3. 為替・海外投資への心理的ハードル
外貨や海外資産への投資は「難しそう」「リスクが大きい」という先入観があり、結果的に日本円だけに集中しがちです。
6. どう分散すべきか?現金以外の資産を考える
6-1. 株式(国内・海外)
株式は企業の成長に連動する資産であり、長期的には現金より高いリターンが期待できます。
特にインデックスファンド(S&P500・オルカン)を通じた分散投資が有効です。
6-2. 債券(国内・海外)
債券は安定した利息収入と値動きの穏やかさが特徴。
米国債や先進国債券を組み合わせれば、円安時のヘッジにもなります。
6-3. 金(ゴールド)
金はインフレや通貨不安に強い資産。「無国籍通貨」としての価値保存機能があります。
6-4. 不動産
不動産は現物資産としてインフレに強い特性があります。
REIT(不動産投資信託)を使えば少額から分散投資が可能です。
7. 現金の役割は「防衛資金」として限定すべき
現金がまったく不要というわけではありません。
生活費の半年〜1年分の現金(生活防衛資金)は必ず確保し、その上で余剰資金を分散投資に回すのが合理的です。
8. まとめ|現金貯蓄は「日本円集中投資」である
現金のみで資産を持つことは、投資の世界で言えば日本円という単一資産への集中投資にほかなりません。
- インフレで価値が目減りするリスク
- 円安で購買力が下がるリスク
- 日本経済や財政への依存リスク
これらを避けるためには、複数の資産・通貨への分散が必須です。
「現金は安全」という思い込みを捨て、
日本円に偏らない資産形成を目指すことが、これからの時代の賢い選択と言えるでしょう。