ROEとは何か?
ROE(Return on Equity、自己資本利益率)は、企業が株主から預かった自己資本を使ってどれだけ効率的に利益を生み出しているかを示す指標です。
数式で表すと以下の通り。
ROE = 当期純利益 ÷ 自己資本 × 100(%)
この指標は企業の「稼ぐ力」を測るための重要なものです。
たとえば同じ利益を出していても、自己資本が少ない会社と多い会社では効率性が違います。その効率性を数値化したものがROEです。

ROEが注目される理由
株主から見たメリット
株主は自分が投資した資金を企業がどれだけ有効活用しているかを知りたいものです。
ROEが高いということは、少ない資本で大きな利益を上げていることを意味し、効率の良い経営をしていると評価できます。
経営効率を測る指標
売上や純利益の大きさだけでは企業の経営効率は測れません。
例えば莫大な資産を持っていても、利益を十分に生み出せていなければ資産の活用が効率的とはいえませんね。
ROEはまさにその効率性を測る指標なのです。

ROEの目安はどれくらい?
日本企業の平均ROE
日本企業の平均的なROEは 6〜8%程度 とされています。これは世界的に見ると低い水準です。
欧米の企業では10〜15%程度が一般的な目安とされるため、日本企業は効率性の面で課題を抱えているといえます。
投資家が注目する水準
一般的には 10%以上 のROEがあると「資本を効率的に活用できている企業」と判断されやすいです。
ただし業種によって目安は異なります。
たとえば金融業やIT業は比較的ROEが高い傾向がありますが、製造業やインフラ業は資本を多く必要とするため低めになります。
ROEを高める要因
利益率の高さ
売上に対する利益率が高ければ、自己資本に対して効率よく利益を生み出せます。
資産効率
保有する資産を有効に活用できているかどうかも重要です。例えば遊休資産が多い企業はROEが低くなりやすいです。
財務レバレッジ
自己資本が少なくても、借入(他人資本)をうまく活用することでROEを高めることができます。
ただし借金が増えすぎると財務リスクが高まる点には注意が必要です。

ROEの計算に使われるデュポン式
ROEは「デュポン式」と呼ばれる分解式で分析することができます。
ROE = 利益率 × 総資産回転率 × 財務レバレッジ
- 利益率:売上からどれだけ利益を残せるか
- 総資産回転率:資産をどれだけ効率的に回転させているか
- 財務レバレッジ:借入をどれだけ活用しているか
これによりROEが高い理由が「利益率の高さ」なのか「資産効率」なのか「借入依存」なのかを把握できます。
ROEのメリット
投資判断の基準になる
ROEは企業の稼ぐ力を一目で確認できるため、投資判断に役立ちます。特に複数企業を比較する際に便利です。
経営の改善指標になる
経営者にとってもROEは重要な指標であり、資本効率を改善するための行動指針となります。
ROE向上を掲げる企業は株主還元を意識している場合も多いです。
ROEのデメリットと注意点
短期的な利益操作に注意
一時的な利益の増加によってROEが高く見えることがあります。
持続的に高ROEを維持できるかどうかを見極めることが重要です。
業種ごとの差
同じROEでも業種によって意味合いが異なります。
製造業でROEが10%あれば優秀ですが、IT企業で同じ数値だと平均的かもしれません。
借入で一時的に高く見える
ROEは自己資本が小さいほど数値が高くなるため、過剰に借入をして自己資本を圧縮すると見かけ上高いROEになります。
これは「質の高いROE」とは言えません。
ROEと他の指標の組み合わせ
ROEとPERの組み合わせ
ROEが高くてもPER(株価収益率)が高ければ、株価にその期待が織り込まれている可能性があります。
ROEの高さが株価に対して適正かどうかを確認しましょう。
ROEとPBRの組み合わせ
ROEとPBR(株価純資産倍率)を組み合わせると、株主資本利益率と株価水準の関係を把握できます。
例えばROEが高いのにPBRが低ければ「割安株」と判断できる場合があります。
ROEとROAの違い
ROEが株主資本を基準とするのに対し、ROA(総資産利益率)は企業全体の資産に対する利益効率を測る指標です。
両者を組み合わせることで、資本と資産の両面から企業の稼ぐ力を評価できます。
高ROE企業の特徴
- 成長性の高い事業を持っている
- ブランド力や競争優位性がある
- 財務戦略がうまい(資本効率を重視している)
- 利益率の高いビジネスモデル
これらの特徴を持つ企業は長期的に株主に利益をもたらしやすいです。

まとめ:ROEは投資の羅針盤
ROEは、企業が株主資本をどれだけ効率的に活用しているかを示す、非常に重要な投資指標です。
ただし借入で無理に高めている場合や一時的な利益で高く見える場合もあるため、持続的に高ROEを維持できる企業かどうか を見極めることが大切です。
投資初心者は、まずはROEが10%以上あるかを一つの目安としつつ、PERやPBRなど他の指標と組み合わせて企業分析を進めるとよいでしょう。