1. 業績指標とは?
株式投資を行う際、企業の価値や成長性を判断するために用いるのが「業績指標」です。
業績指標は、企業の経営状態や収益力を数値で表したものであり、投資家にとっての羅針盤となります。
- 儲かっている会社なのか?
- 成長しているのか?
- 株価は割安なのか?
こうした疑問に答えるのが、業績指標の分析です。

2. 主要な業績指標とその見方
ここでは、投資家が特に注目する代表的な指標を解説します。
2-1. 売上高
定義
企業が商品やサービスを販売して得た総収入。
ポイント
- 規模や成長性を見る基本指標
- 増収傾向なら事業拡大の可能性大
- ただし、売上が伸びても利益が出ていない場合は注意
例
- 2024年度 売上高:1兆円(前年比+10%)
→ 成長企業として評価できるが、利益率も確認が必要
2-2. 営業利益・経常利益・純利益
営業利益
本業の儲けを示す指標。
売上高-(売上原価+販売管理費)
経常利益
本業に加え、金融収支(利息や為替差益など)も含む利益。
純利益
税引後の最終利益。株主に帰属する利益。
ポイント
- 営業利益:本業の実力を評価するのに最適
- 経常利益:金融面の収支を含めた利益力
- 純利益:配当や株主還元の源泉となる重要指標
2-3. EPS(1株あたり利益)
定義
EPS=純利益 ÷ 発行済株式数
ポイント
- 1株あたりの稼ぐ力を示す
- EPSが上昇している企業は、株価上昇余地がある
例
- 純利益100億円、株式数1億株 → EPS=100円
2-4. ROE(自己資本利益率)
定義
ROE=純利益 ÷ 自己資本 × 100
ポイント
- 株主資本をどれだけ効率よく増やしているか
- 一般的に10%以上なら優秀
- 高ROE=株主還元に積極的な企業が多い
2-5. ROA(総資産利益率)
定義
ROA=純利益 ÷ 総資産 × 100
ポイント
- 資産全体に対する収益性を示す
- ROEと合わせて見ることで、借入依存度を把握可能
2-6. PER(株価収益率)
定義
PER=株価 ÷ EPS
ポイント
- 株価が利益の何倍で評価されているか
- 15倍前後が目安(業種による)
- 高PER=成長期待、低PER=割安 or 成長鈍化
2-7. PBR(株価純資産倍率)
定義
PBR=株価 ÷ 1株あたり純資産(BPS)
ポイント
- 株価が純資産の何倍かを示す
- 1倍以下=解散価値と同水準(割安の可能性)
2-8. 配当性向
定義
配当性向=配当金総額 ÷ 純利益 × 100
ポイント
- 利益のうち配当に回す割合
- 30〜50%が目安。高すぎると減配リスクあり

3. 業績指標の活用方法
3-1. 成長性を見る
- 売上高・EPSの増加率に注目
- 過去3〜5年の推移を確認する
3-2. 収益性を見る
- ROE・ROAで効率性を測定
- 業界平均と比較することが重要
3-3. 割安度を見る
- PER・PBRで株価の水準を評価
- 低PER・低PBRでも成長性が低い場合は注意
3-4. 安定性・還元性を見る
- 配当性向や純利益の安定性
- 安定配当企業は長期投資向き
4. 実例:トヨタ自動車の業績指標(イメージ)
- 売上高:40兆円(前年比+10%)
- 営業利益:4兆円(営業利益率10%)
- EPS:700円
- ROE:12%
- PER:12倍
- PBR:1.2倍
- 配当性向:30%
→ 売上・利益ともに安定成長、株主還元もバランス良好
5. 指標分析の注意点
5-1. 単年度だけで判断しない
- 3〜5年の推移を見ることが重要
- 一時的な利益増減に惑わされない
5-2. 業界特性を考慮する
- 成長株(IT)はPER高めでも許容
- 低成長株(電力・銀行)は低PERが普通
5-3. 他指標と組み合わせる
- 1つの指標だけでなく、複数の指標を総合的に判断
6. 初心者がまず見るべき3つの指標
- EPS:1株あたりの利益
- ROE:株主資本の収益性
- PER:株価が割安か割高か
この3つを押さえるだけでも、企業の成長性・効率性・株価水準が概ね理解できます。
7. 長期投資における業績指標の活かし方
- 安定したEPS成長がある企業を選ぶ
- ROE10%以上、配当性向30〜50%を目安にする
- PER・PBRで割安な時期に買う
- 長期で利益・配当を再投資し、複利効果を狙う

8. まとめ
株式会社の業績指標は、企業の健康診断結果のようなものです。
これらを理解することで、
- 儲かる企業かどうか
- 成長性があるか
- 株価が割安か
を判断できます。
特に初心者は、EPS・ROE・PERの3つを中心に分析し、徐々に他の指標も組み合わせると良いでしょう。
数字を味方につけることで、感覚ではなく根拠ある投資判断ができるようになります。