地域分散投資の基本的な考え方
投資における地域分散とは、資産を複数の国や地域に分けて投資することを意味します。
株式や債券、不動産といった資産クラスを分けるだけでなく、地域の偏りを避けることがリスク管理の基本です。
特定の国に集中投資してしまうと、その国の経済や政治の影響を大きく受けてしまいます。
世界経済は相互に連動している一方で、各国ごとに景気循環や為替の動きは異なるため、地域分散はリスク低減に欠かせません。

地域分散を怠ったときの典型的なリスク
地域分散を行わないと、資産が一国の事情に大きく左右されます。
例えば、株価暴落、政治不安、通貨危機、自然災害といった出来事が起きた際、その影響をもろに受けてしまいます。
他地域に投資していれば被害を軽減できたはずのリスクが、集中投資ゆえに資産全体を直撃します。
投資の世界では「卵を一つのカゴに盛るな」という格言があり、これはまさに地域分散の重要性を端的に表しています。
日本市場に偏った投資の不利益
通常、投資家は自国市場に資産を集中させやすい傾向があります。我々ならば日本市場ですね。
しかし長期的にみると日本市場だけに依存することは大きなリスクです。
日本は少子高齢化や人口減少が進み、内需の成長が限定的です。
その結果、株式市場の成長率も先進国の中で比較的低い水準にとどまっています。
もし海外市場に分散していれば、米国株や新興国株の成長を享受できる可能性がありました。
地域分散を怠ることで、成長の恩恵を逃すという不利益が生じるのです。

米国市場に偏った投資の不利益
近年は米国株の好調さから、米国市場に集中する投資家も増えています。
たしかに米国は世界最大の経済規模とイノベーション力を誇ります。
しかし米国市場にのみ依存することもまたリスクを伴います。
過去にはITバブル崩壊やリーマンショックといった深刻な暴落がありました。
その際、米国に集中投資していた投資家は大きな資産減少を経験しています。
もし地域分散を行っていれば、欧州やアジア市場で損失をある程度補えた可能性があります。
新興国市場に偏った投資の不利益
成長率の高さを理由に新興国に集中投資するケースもあります。
しかし新興国は経済成長の一方で、政治的な不安定さや通貨リスクが常に存在します。
例えば、通貨危機や資本規制が突発的に発生すると、株式や債券は急落し、為替でも大きな損失を被ります。
過去のアジア通貨危機やロシアの金融危機などは、新興国に集中していた投資家に深刻な不利益を与えました。
成長期待の裏には大きな不確実性があることを忘れてはなりません。

為替リスクによる影響
地域分散を行わない場合、為替リスクも偏ります。
例えば円資産にしか投資していない場合、円安時には海外資産の恩恵を享受できません。
逆に米ドル資産に偏っている場合、ドル安局面では資産価値が大きく目減りします。
複数通貨に分散していれば、為替変動の影響を相殺できる可能性があります。
地域分散は株式や債券だけでなく、通貨リスクのコントロールにもつながります。
地域分散が機能した実例
地域分散の効果は歴史的にも実証されています。
たとえば2000年代初頭に米国株が低迷したとき、資源価格の上昇を背景に新興国株や資源国株が好調でした。
そのため米国株に集中していた投資家はリターンを得られず、新興国にも投資していた投資家は資産を増やすことができました。
また、欧州債務危機の際には米国や日本市場が比較的堅調で、欧州株式への集中リスクを地域分散で緩和できた例もあります。
このように、地域ごとの経済サイクルの違いを活かすことでリスクを分散できるのです。

長期投資における地域分散の意義
長期的な資産形成を目指す投資家にとって、地域分散は欠かせない戦略です。
単年で見れば特定の市場に集中する方がリターンが大きいこともあります。
しかし数十年のスパンでは、どの国も必ず景気後退や危機を経験します。
そのたびに集中投資では大きな損失を被る可能性があります。
地域分散を徹底することでリターンの安定性を高め、資産を守りながら成長を享受することができます。
まとめ
投資で地域分散を怠ることは、株価下落リスク、政治リスク、通貨リスクなどを集中して背負うことにつながります。
日本だけに依存すれば成長機会を逃し、米国だけに依存すれば暴落時の損失が大きくなり、新興国だけに依存すれば通貨危機の影響を直撃します。
一方、地域分散を徹底することで、世界の経済成長をバランスよく享受しながらリスクを軽減できます。
投資家にとって地域分散は、資産形成の安定性を支える「見えない保険」のような存在です。
長期的な資産形成を目指すなら、必ず地域分散を意識した投資戦略がマストと言えるでしょう。