はじめに
新NISAのスタートやiDeCoの普及により、日本でも「長期の積み立て投資」を始める人が増えています。中でも人気なのが、米国株式や全世界株式に投資できるインデックスファンドです。
「毎月コツコツ積み立てるだけで将来の資産形成ができる」と言われ、若い世代からシニア世代まで幅広い層に広がっています。
しかし投資において本当に大切なのは「出口戦略」、つまり 資産を取り崩すときにどうするか です。
特に注意しなければならないのが 為替の動き(円高・円安)。
投資中は「円安=有利」ですが、資産を円に戻すときに「円高」が来てしまうと、大きく目減りすることがあるのです。
この記事では初心者の方にもわかりやすく、なぜ円高がリスクになるのか、実際にどのくらいの影響があるのか、どう備えればよいのかを解説していきます。

インデックスファンドと為替の関係
インデックスファンドは「株価指数」に連動する投資信託です。
- 日経平均株価やTOPIXなど、日本株式だけを対象にしているもの
- S&P500や全世界株式など、海外株式を含むもの
このうち後者、つまり 海外資産を含むファンド は、株価の値動きに加えて 為替相場の変動 の影響を強く受けます。
たとえば米国株式に投資している場合:
- 米国株が10%値上がりしても、同時に円高が10%進めば、円に換算したときのリターンはゼロに近くなってしまう。
- 逆に、米国株が横ばいでも円安になれば、為替差益によって利益が出る。
つまり長期で積み立てるときは「株価の成長+為替動向」が最終的な資産額を決めるのです。
なぜ取り崩し時の円高が問題なのか
積み立てのときは「毎月一定額」で買うので、円高時には多めに口数を買えるメリットがあります。いわゆる「ドルコスト平均法」で、時間分散が効きます。
しかし、取り崩しは逆です。
- 円安なら有利に円換算できる
- 円高だと一気に資産額が目減りする
特に老後資金など「生活費のために必要」な取り崩しでは、円高による減少は大きなダメージとなります。

過去の円高局面の実例
歴史を振り返ると日本円は世界的に「安全資産」とみなされており、不安定な局面では買われやすい通貨です。その結果、急激な円高が何度も起こりました。
1985年:プラザ合意
1ドル=240円 → 120円台まで急速な円高。
ドル建て資産を持つ投資家は大きな目減りを経験しました。
2008年:リーマンショック
世界的な金融不安で「リスク回避の円買い」が起こり、1ドル=110円 → 90円割れへ。
海外株価下落+円高で、日本人投資家の損失は拡大しました。
2011年:東日本大震災後
一時的に1ドル=75円台という「歴史的な円高」を記録。
米国株は回復基調でしたが、日本の投資家にとってはリターンがほとんど得られない状態が続きました。
つまり今後も「取り崩しの時期に円高が重なるリスク」は十分に考えられるのです。
シミュレーション:20年間の積み立てと円高・円安の影響
ここで具体的にシミュレーションしてみましょう。
- 毎月3万円を米国株式インデックスに積み立て
- 想定リターン:年率5%(株価上昇+円安効果込み)
- 期間:20年
ケース1:円安が進行した場合
20年後の想定資産額:約1,240万円。
さらに1ドル=150円から160円へ円安が進んだ場合、円換算で資産額は増加します。
ケース2:円高に振れた場合
20年後の同じ条件でも、もし円が100円まで円高になった場合、円換算の資産額は約1,000万円程度に減少。
同じ運用成果でも「為替差」で200万円以上の差が生まれる可能性があるのです。

為替ヘッジという方法
「円高が怖いなら、ヘッジをすればいいのでは?」と思う方もいるでしょう。
為替ヘッジ付きのインデックスファンドを選べば、円高・円安の影響をある程度排除できます。
ただし:
- ヘッジコスト(金利差に応じたコスト)が発生
- 長期ではリターンを削る可能性がある
- 常にヘッジが有利とは限らない
現在のように日本と米国の金利差が大きいと、ヘッジコストがかなり重くなり、結果として「円安の恩恵も受けられないのにコストだけ払う」状況になることもあります。
円高リスクへの現実的な備え方
初心者が円高を完全に避けることはできません。為替を読むのはプロでも難しいからです。
そこで大切なのは「備える工夫」です。
取り崩しを段階的に
一度に全額を円に戻さず、数年に分けて少しずつ換金する。これにより円高・円安の波を平均化できる。
外貨のまま使う
将来海外旅行や子どもの留学、あるいは海外移住を考えている人は、わざわざ円に戻さず外貨のまま使う。為替リスクを「使い道」によって回避できるケースもあります。
定期的なリバランス
円高時に海外資産を一部売却して国内資産に回すなど、資産配分を調整することでリスクを軽減。
国内資産との分散
海外株式だけでなく、日本株や日本債券もポートフォリオに組み入れる。円資産で安定を確保し、海外資産で成長を狙う。
投資初心者に伝えたいこと
多くの初心者は「積み立て=安心」と思いがちですが、ゴールは積み立てではありません。
本当に大切なのは「取り崩すときに資産を守れるかどうか」です。
- 投資はマラソンのようなもの。走る(積み立てる)だけでなく、ゴールテープを切る(取り崩す)瞬間が一番重要。
- 円高リスクを無視していると、「せっかく走り切ったのにゴールで転ぶ」ようなことになりかねません。

まとめ
積み立て投資は資産形成の最強の手段ですが、出口戦略を考えなければ安心とは言えません。
特に日本人投資家にとっては「円高リスク」が最大の落とし穴です。
- 円高は歴史的に繰り返し起きてきた
- 取り崩しの時期と重なると大きな損失に直結する
- 分散・段階的取り崩し・リバランスなどで備えることができる
「積み立てはゴールではなくスタートライン」――出口を意識することこそ、長期投資を成功に導くカギとなるでしょう。