投資の世界には、株価が高値圏に入ると急に躊躇しはじめる投資家の心理があります。まるで崖の縁に立っているかのような恐怖感から「今から投資すると後で下落して損をするのでは?」という過度な懸念が生まれ、行動できなくなる状態です。
これはただの迷いや慎重さではなく、心理的なバイアスによって、資産形成の機会を逃すリスクにもつながります。本記事ではそのメカニズムや最新の市場状況も交えながら、どう対処すべきかを検証します。

今日の日経平均はどう動いた?
2025年8月12日、日経平均株価は終値で42,718.17円を記録し、前日比プラス2.15%と大幅上昇。年初来高値を更新し、米国やアジアの株式市場の上昇を受けて日本株にも勢いが広がりました。終値レンジは42,083〜42,999円で、一時的に42,999円超えも試す場面がありました。
このようなシーンで高所恐怖症に陥る人は、今日が「投資の最高地点」と錯覚してしまうかもしれません。しかし、過去20年、30年の長期チャートを見れば、こうした高値はしばしば通過点に過ぎないケースも多々あります。
なぜ人は“高値で買う恐怖”に囚われるのか?
心理バイアス①:損失回避バイアス
人は同じ額の利益より損失の痛みを強く感じる傾向があります。例え少しでも売却価格を割るのではと感じると、その恐れが投資に踏み込む意思を阻みます。
心理バイアス②:アンカリング(基準値への拘り)
過去の安値が頭に残ると、「この株はあの時はもっと安かった」という思考が優先され、現在の価格が割高に感じられやすくなります。
心理バイアス③:群衆心理とメディア影響
メディアが「史上最高値更新」「バブル懸念」と騒ぐ令には、市場参加者が恐れに駆られて高値圏で一歩が踏み出せなくなる悪循環が生じます。

高所恐怖症が投資判断に与える影響
- 乗り遅れ(タイミング損失):上昇トレンドで参入を躊躇し、利益機会を逃す。
- キャッシュの遊休化:資金が眠ってしまい、インフレや複利機会を取り逃す。
- 意思決定疲れ:「買うか待つか」の逡巡で投資心理が疲弊し、結果的に行動を起こせなくなる。
- 精神的負担増加:判断がその都度恐れと共にあり、投資行動がストレスに感じられるようになる。
高所恐怖症を克服する実践的な方法
ドルコスト平均法でリスク分散
毎月一定額を投資することで、価格の高低にかかわらず積立を継続でき、心理的負担が大幅に軽減されます。
明文化された投資ルールを持つ
「毎月の余剰収入の20%は必ず投資に回す」「株価が一定%以上下がったら追加購入する」などのルールを作れば、感情よりルールが優先されます。
長期チャートを見る習慣をつける
1年チャートではなく、10年や20年のチャートを確認することで、あの高値も中長期で見れば妥当な位置にあると視点が切り替わります。
多様な資産へ分散投資
株式だけでなく債券、REIT、金など多様な資産に分散することで、特定市場の高値への恐れを分散できます。
インカム獲得戦略を取り入れる
高配当ETFや株式を活用して、分配金を生活費に使うスタイルでは、価格の変動よりキャッシュフローに注目でき、心理的安定が保たれます。

今日の市場を踏まえた視点:高値でも乗る「覚悟」と戦略
今日の日経平均のように大幅上昇し高値更新が続く状況では、慎重になるのは自然な心理ですが、「見送ったせいで数ヶ月後にはさらに上昇していた」という後悔は避けたいところです。
米中の関税問題緩和や円安、半導体や自動車株の好調などが高値を押し上げていると言われていますが、それ以上に「今日本が注目されるタイミングだからこそ積極的に参入する」という判断も評価できると思われます。
具体的な投資スタイル例
投資初心者向け:
- 毎月3万円の積立投資
- 分配金があるETFを一部組み込み、収入を再投資に活用
中級者向け:
- 株式:債券=7:3のポートフォリオ構成
- 高値更新時も淡々と積立。「さらに10%上昇したら、10%分を再投資する」などルール追加も有効
上級者向け:
- 高値懸念時には先物やオプションでヘッジを検討。
- 50%を株式、30%インカム系ETF、20%現金資金で構成し、柔軟に売買できる準備をしておく。
長期視点での結論
投資における高所恐怖症は誰もが感じる自然な心理です。ただし、それに振り回されてチャンスを逃すのは長期的な資産形成において機会損失につながります。重要なのは、恐れを戦略に変える思考を身に付けることです。
ドルコスト平均法や分散投資、明文化されたルール、長期チャートへの注目などを駆使し、高値でも冷静かつ着実に投資を続ける姿勢が結果として大きな成果をもたらします。